「熟成士 Affineur ~アフィナー~」とは?
「熟成士 Affineur ~アフィナー~」とは
最近日本でも「熟成肉」や「熟成魚」など「熟成」という言葉をよく耳にするようになりました。チーズは発酵食品としても知られていますが、熟成という過程を経て美味しくなっていきます。
熟成士は熟成を専門で行う人のことで、生産者さんからチーズを買い、自分たちのケーブ(熟成庫)で自分たちの理想の味に近づけるために管理をし、出来上がったものを市場に送り出しています。
チーズの熟成は「熟成士」という専門家のいない場所で行われることもありますし、熟成士を通さずにチーズ生産者さんのところで熟成されたものがそのまま売られることもあります。
前回のブログでもお伝えした通り、チーズは色々な過程を経てチーズ屋さんやスーパーに並んでいます。
今回はその役割のひとつ、熟成士についてお伝えしていきます。
「熟成士」とは
熟成士とは文字通り、熟成をする人々のことなのですが、実際なにをしているのでしょうか?一言で言ってしまえば「チーズの状態を管理して美味しい味を引き出す」のが熟成士の役割なのですが、実際どんなことをしているのか詳しく見ていきましょう。
―温度・湿度管理
微生物の種類によって、動きが活発になる温度や湿度が違います。またチーズの種類によっても、活発になってほしい微生物は異なってくるので、そこを調整しながらそのチーズによって丁度よい温度と湿度を保ちます。
微生物が活発になりすぎても、動きが弱すぎても美味しくなってはくれないので、毎日外の気温や湿度も考慮しつつ、またチーズの状態を見ながら調節します。
―反転作業
頻度は熟成士によって、またチーズの大きさや種類によって変わりますが、チーズを反転させる作業があります。これをする理由としては主に1. 表と裏を均等に熟成させる2. 形を整えるということがあります。
1. 表と裏を均等に熟成させる
厳密にいえば表と裏がないように(あるものもあります)、均等に熟成させるためです。熟成させる際、チーズは木の板や藁、ステンレスや網など様々なものの上に乗せて熟成しますが、その時にチーズには必ず「接地面」と「非接地面」ができます。
接地面は空気が通らないため湿度が留まって蒸れやすく、非接地面は逆に乾燥しやすくなります。また、微生物は空気が必要なため、定期的に空気を送り込むことで動きが活発な部分とそうでない部分で味にムラがでないようにします。
2. 形を整える
1でもお伝えした通り、チーズを熟成させる際、木の板や藁、ステンレスや網など様々なものの上に乗せます。どんなに出荷される時に固いチーズでも最初は水分があり柔らかいので、そのまま放置してしまうと自分の重さで跡がついてしまったり、場合によってはチーズが外皮を形成する際に癒着してはがれなくなったりしてしまいます。
また、ソフトタイプのチーズなどは水分が多いため重力に従ってどんどん広がっていき、せっかくできた外皮が破れて中身が流れ出てしまうことや、「ゾウの足」と呼ばれるような不格好な姿になってしまうことが多いのです。それを防ぐため、反転作業を行う必要があります。
*ミニクイズ:反転をうっかり忘れてしまったことで生まれたチーズがあります。なんでしょう?? 答えはブログの最後でお伝えします!
―ブラッシング
微生物やカビはチーズに欠かせないものですが、多すぎても困ってしまいます。特にシェーブルチーズは自然に外皮とカビをまとって熟成をし、複雑な味と風味を形成していきますが、増えすぎてしまうと味を損なうだけでなく、チーズ同士がカビによってくっついてしまうこともあるのです!
外皮はいわば人間のかさぶたや皮膚のようなもの。一度くっついたものを無理やりはがそうとすると、せっかくできた外皮が破れてしまい、味も見た目も損なってしまいます。
そうならないように、ブラッシングをしながら適度にカビや微生物の量を調節しているのです。
―ウォッシング
ウォッシングとは、名前の通りチーズを「ウォッシュ(洗う)」こと。チーズをウォッシュするのに使われる液体には大きく分けて真水・塩水・酒の3つがあり、どれを使うかによって味わいも変わってきます。他にウォッシュする頻度や量、器具(ブラシなのか布なのか等)によっても熟成の進み方が変わるので不思議です。
―品質・味のチェック
熟成士によって一番大切な作業のひとつ、テイスティング。テイスティングをする際は香りや見た目、テクスチャー、口の中での溶け方や香りの広がり方、余韻の残り方など様々な項目をチェックします。同じロットのチーズを反復してテイスティングすることにより、熟成状況を確認するだけでなく、より自分たちの理想の味に近づけるために、管理の方法を変えたりもします。
=番外編 生産者とのつながり=
以上お伝えしてきた通り、チーズ熟成士の仕事はいかにチーズを美味しくできるか、美味しさを最大限引き出せるか、がカギとなっています。
そのため、使っている元々のチーズの品質もとても大事になってきます。熟成士によってはチーズ生産者に会いに行き、牛に与える飼料や牛を育てる環境、製造方法や工程についても、チーズを作る段階からどうしたらチーズを一番美味しくいい状態で食べてもらえるのかを話し合っている人もいます。
チーズの味を左右する要因はたくさんあるのですね。
日本ではまだまだなじみの少ない「熟成士」というお仕事。フランスでは優れた職人に送られるMOF(MeilleurOuvrier de France)の称号をもつ熟成士も数多くおり、フランスのチーズ文化を語る際に外せない存在となってきています。
筆者の知っている限りの知識を詰め込みましたが、なんといっても奥の深い熟成士の仕事。カバーしきれていない部分もあるかと思いますが、少しでも皆さんに新しい世界を知っていただけたら幸いです!
*ミニクイズの答え*
ラングルチーズ(Langres cheese)
真ん中がペコっとへこんでいるウォッシュチーズ。反転を忘れてしまうとこんなに凹んでしまうんですね!窪みにシャンパンを入れて食べるのがツウなんだとか。
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